ブリタニカ

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※感想については全てネタバレあり。くれぐれも鑑賞後にご覧ください※

ゲーム・オブ・スローンズ

原作:RR・マーティン

製作:D・ベニオフ

区分:海外ドラマ  

評価:★★★★★

 

今さら自分に問い掛けるまでも無いが、海外ドラマは結構観てきた方だと思う。海外ドラマとは! 的なことも自分の中にしっかり持っていたつもり。しかし、この作品はこう呼びかけてきた。「それではあまりに小さくまとまり過ぎだ」と。海外ドラマと言うジャンルが持つポテンシャルは、もっと途方も無いものだった。GOTは、その可能性を示すには十分過ぎる大作だったのである。

そもそも今まで考えていた同ジャンル最大の武器は、その圧倒的ボリューム感にあった。他ジャンルには到底真似できない長期間にわたる積み上げによって、視聴者との間に言わば力ずくで絆を作りあげるという手法だ。だが所詮、それは物量的な話(とはいえ、なんか拙さというか可愛げもあって、それはそれで自分は好きなんだけど)。量は質に勝るとも言うが、では量も質も全て満たした時、一体どうなるのか? と言うよりも、本来そうなのである。映画にしろ、小説にしろ、量も質も作者によって規定された状態で提供されることが普通だ。海外ドラマというジャンルがそもそも異常。あるべきものが欠落していたと言える。その点に盲目となってしまっていた原因は、まさに力ずくでねじ伏せられていた証拠かもしれない。しかし、GOTはそこで甘んじることなく、欠落を(完璧に、といえるかどうかは各人次第か)補った上で完成した。製作陣は、映画という器に注げば溢れて、濁り、腐ることを知悉し、海外ドラマという器を選ぶべくして選んだ(この点に関しては、文學界20202月号掲載『惑星的ミサのあとで--「ゲーム・オブ・スローンズ」覚え書き』という評論が詳細を記述。このドラマに感動した人は必読級です)。その結果、自分は思ったのだ。過去に観てきたドラマ、今後観るだろうドラマも、目指すべきはそこだと。目を瞑ってはいけない。時に、「義務は愛に勝つ」byティリオン。ってかまあ、お国柄色々難しいのは重々承知の上だが、やっぱり終わりを見据えて作ろうよ……当たり前だけどさ……

長くなったが、さて内容自体にも目を向けよう。一大ファンタジー戦記、と表現されるであろう同作品。「人としてこうあるべき」をとんでもないクオリティとスケールで描き切った、これに尽きると思う。死の軍団も、鉄の玉座も、詰まるところ「仲良く。そして勇敢に」という視聴者ひいてはこの時代に生きる全ての人々に向けた、力強いメッセージのための触媒だったのである。あまりの壮大さにそのテーマさえ身構えてしまいそうになるが、それとは別に、この作品最大の強みはエンタメとして視聴者を魅了し尽くしたところにあると思う。むしろ新しい何かを提示したというより、古くから続く強大な流れをさらに洗練した感じ、と言った方が自分にはしっくりくる。ただし、その洗練された度合いがとにかくエグい。印象的だった点は、この「ザ・物語」というべき今作の中に、物語がメタ的な意味で出てくること。お喋り大好きティリオンは最後の演説で物語の価値と危険性について語り、立派になったサム君がまさにこの大戦の歴史を綴った『氷と炎の歌』(原作本そのまま出ちゃった!)という名の物語(歴史書)を完成させ、悟りの境地ブランこそ過去と未来全ての物語を見通す最終的な王である。そして何よりこの作品をあらゆる意味で形作るのが、物語の重要性なのだ。積み上げてきたものは果てしなく多い、だからこその面白さ。それがGOTである。

最後に欠落の話だ。前にも書いたように、今作は終わりを見据えてあるが、だからと言って全てが上手くいったとは言えないのではなかろうか。所感レベルではあるが、不満や疑問点もいくつかある。サーセイは結構あっさり死んだし、S7・8の畳み掛け具合は怒涛と表現するにはあまりに詰め込み過ぎだと思う(逆にそれまでが丁寧過ぎ? いや違うな)。デナーリスは伏線があったとはいえ、いくらなんでもそれに忠実過ぎたし(もっと抗ってよ)、トアマンドは可愛いからマジで許す。よくわからんのは森の子ら。彼らって前にも死者と戦ってたの? 今回が初じゃないんだ?じゃあ前は誰がどうやって倒したの? ってか学習能力ないやん? そんなん何回も作るなよ!(笑)。そして一番は結末だ。兎にも角にも良い子ちゃん過ぎる。やんちゃの限りを尽くしてきたディティールが、無駄にハードルを上げてしまったせいだろうか。もんのすごいのを期待してしまったが故に、収まり良過ぎて逆に収まらない感さえあるような。

でも今作一番の欠点は、この作品を観終わった後の途方も無い喪失感。これ一択。奇しくも、まさに冬来たるである(うまいこと言ってやった感はちょっとある……冷えるなあ)。