ブリタニカ

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※感想については全てネタバレあり。くれぐれも鑑賞後にご覧ください※

アメリカン・スナイパー

監督:クリント・イーストウッド

出演:ブラッドリー・クーパー

区分:映画

評価:★★

 

残念ながら残念な映画だった。期待がそれなりに大きかった分、「こんなもんかあ」と感じてしまった。クリント・イーストウッドは巨匠らしいので、知らぬ間に一つ二つは金曜ロードとかで見たことがあるんだろうけど、今作に関してはこの監督が撮りたかったテーマが、イラク戦争というビッグコンテンツに対して役不足過ぎたのかなと思えてならない。

「愛する家族から離れたくなかったが、戦場で戦う友人や同志も守りたかった、という狙撃手の心境に共感し、監督を引き受けた」「クリスの功績と、人生の個人的な側面が、どう交わるかを描いた。」らしい。確かに巨匠というだけあって、コメント通りの映画を見事に作り上げている。しかしその代償として、深みの無い通り一辺倒の印象しか残らなかったのでは、と思う。パッケージを見て(観てないが恐らく予告編も同様だろう)この作品に抱くイメージは「ああきっと、任務だから人殺さないといけないけど、平和な世界とのギャップに苦しむんだろうなあ」みたいにぼんやり思うはず。少なくとも自分はそうだった。そして実際に見てみると、その通りのことが表現されている。ただ、それだけ。浮き彫りになるのは、主人公カイルの英雄思想?的な性格で、それは個人の問題に帰するのみだ。それをイラク戦争なんていう、複雑なノンフィクションに当てはめて描いたことが最大の敗因なんじゃないかと思う。だって、それなら架空の戦争(現実とは離れたSF世界でも良い。)を舞台にした方がスッキリ見れる。実際の戦争を持って来てしまうと、別のテーマを意識ぜざるを得なくなる。だが当然それらのテーマは素通りなので、物足りなさと各方面からの批判だけが取り残される。(もっとも、イスラム側を敵としてしか描かないことで、一方的な視点しか持っていないアメリカ人へのメッセージとしている……わけないか)

ただ、クリスが今まで救って来た味方(PTSDで錯乱していたらしい?)に、逆に殺されてしまう、という壮絶かつ皮肉過ぎる終わりを迎えてしまうのは強烈だった。撮影が終わって偶然起こったことなのか、それともその結末込みで作品を撮ったのかで少々話が違ってくるが、どうやら前者っぽい。「考えさせる映画」の雰囲気を出しておきながら、結局「観せる映画」にしっかり仕立てられていたようだ。がっかりである。

最後に、イラク戦争で命を落とされた方々の冥福を心からお祈り致します。